南ドイツ新聞 - 2011年5月9日
浜岡原発を操業する中部電力は菅首相の圧力に屈し、4号機と5号機の停止を決めた。定期検査で停止中の3号機は差し当たりそのまま、1号機と2号機は廃炉が決まっている。
浜岡原発停止の要請は突如出された。浜岡が世界一危険な原発になろうことは、建設開始前に既に言われていた。日本の地震学者は、浜岡原発のある静岡県が次の30年でM8級の地震に襲われる確率は87%と見積もる。9メートルに及ぶ津波を引き起こしうる。浜岡は他の日本の原発より耐震強化された設計だが防波壁はない。東京電力同様、中部電力はコストのために安全対策強化の必要性を否定していた。
神戸大学名誉教授(地震学)の石橋克彦氏が2007年に原子力安全委員会のメンバーとして地震による原発事故の予測シナリオを作った際、彼は浜岡を例にあげた。福島第一より事故の確率が高いだけでなく、事故が起きた場合の危険性もより高い。事故が起きれば東京からの避難が必要、と石橋氏は警告していた。福島のように周辺20kmが立ち入り禁止区域となれば、原発付近を通る日本の交通の要である東海道新幹線や高速道路が遮断されてしまう。
菅首相は、法的根拠がないのを意識しながらも、政治的信頼を賭けて要浜岡原発停止を要請した。今のところ少なくとも短期的には国民から支持を得たと言っていい。名目上は私企業である日本の電力会社がどのような自己理解をしているかは、停止に伴う追加費用を顧客や株主に転嫁するわけにはいかないという中部電力の水野明久社長の発言から明らかだ。国がそれを負担せよというわけだ。
浜岡の件で、菅首相は官学産の腐敗した徒党を差すいわゆる「原発村」から初めて距離を置いた。ただ、首相が得たのは賞賛だけではない。また、仙谷官房副長官が他の原発を停止することはないと保証したのに対し、細野首相補佐官はまだ何も決まっていない、と言う。市民は割れている。浜岡原発のある小さな町御前崎でも同じだ。不安は大きいが、原発によって税金が支払われ、雇用が生まれた。浜岡は防波壁が建てられるまで2年間は停止となる。
http://www.sueddeutsche.de/panorama/japan-reaktoren-in-hamaoka-gefaehrlichstes-akw-der-welt-wird-stillgelegt-1.1095211